何年もテレビを見ることはありませんが、かつてテレビを見ていた時間以上にYouTubeを見ます。多くのテレビ番組は偏った価値観を押し付けて来ますが、YouTubeならではの映像と動画には心を動かされます。最もインスパイアを与えてくれるのは、ヨーロッパを中心とした狭小住宅を改装するNEVER TOO SMALLで、みすぼらしく劣悪な環境の小さな住宅が、夢の空間に蘇る様子を眺めるだけでわくわくします。ロンドンの見捨てられたような薄汚れた住宅が、わずか13㎡とは思えない温かみのある幸せな暮らしの場へと変わる映像は印象的でした。制約は人をクリエイティブにし、欠乏さえ喜びに変えます。われわれは使ったお金の多寡が幸せに関係すると考えますが、少しの創造性を発揮すれば、わずかな投入資源で幸せな暮らしを手に入れることができるのでしょう。
月: 2022年4月
歩くだけで瞑想
最近の朝のルーティンは雑巾がけです。窓ふきや雑巾がけは運動になる上に肩こりにも効きます。何より早朝に家がきれいになると一日を気分よく始められ生産性が高まりそうです。我が家の床は杉の無垢材で、様々な樹種のなかから一番安いという理由で選んだのですが、表面が衝撃に弱くラブラドールが駆け上がる階段などは築後2年とは思えない無残な姿です。傷つきやすい杉板を選んだことを一度は悔やんだのですが、今は積極的に杉を選ぶべきだと思います。水を吸い上げる組織によって柔らかい杉の表面は、雑巾がけの後に素足で歩くと、その人肌のような微細な凹凸による密着感が心地よく、足裏が鋭敏な感覚を取り戻します。歩くのに負担が少なく、クッションフロアやウレタン塗装をされたフローリングでは味わえない自然とつながる温かみを感じ、室内を歩くだけで瞑想になります。
スマートなひけらかし?
連日伝えられる知床のニュースに心が痛みます。事故の人災的側面が注目され、この会社の経営指導をしてきたカリスマ社長のいる㈱武蔵野がネット検索上位になるなど影響が広がります。観光船会社との関係を示す過去の記事を次々と削除するカリスマらしからぬ姑息さがかえって炎上を招き、露出が増えるだけ叩かれるリスクも高まります。一方で、バイトテロには備えていたはずの吉野家のシャブ漬け発言は、100億の時価総額を消しただけでなく、批判の矛先は同席した教授や早稲田大学にも向かいます。溺れる犬を棒で叩く批判は悪趣味ながら、自らをカリスマやエリートと言ってしまう自己顕示が招いた災いとも言えそうです。自己顕示は誰もが持つ欲求ですが、出る杭が打たれるこの国では、人に恨まれないスマートなひけらかしのスキルが必要なのかもしれません。
本性を現したプロフェッショナル
連休直前に起きた知床の悲劇に日本中が衝撃を受けました。2、3年前に交代した社長は海や船のことを理解せず、ベテランを解雇し悪天候でも運航を続けたと報じられます。衝撃と言えば、吉野家の元常務による早稲田大学社会人大学院での不適切発言も炎上しました。知床の悲劇は連休を心待ちにしていた消費者心理を一気に冷やし、シャブ漬け発言は吉野家の時価総額を数日で100億円毀損しました。消費者心理を熟知するエリート集団のP&Gマフィアに違和感を覚えるのは、顧客を人ではなく数字やデータとして認識する傲慢さで、知床の船会社の経営者と同根です。同時に、不用品に高い値札をつけるマーケティングに踊らされる消費者も共犯です。人命軽視の社長も客を見下すプロフェッショナル・マーケターも、本性が言葉となり行動となっただけでしょう。
快楽か平穏か
週末に妻がUTMFのボランティアに行き、エイドで余ったバナナやお菓子をもらってきました。そのまま食べられる食品を手の届くところに置くことが危険なのは、人の本能は過食するようにできているからだと思います。午前中は固形物や糖質を摂らないというルールを守るのは容易ですが、ひとたび何かを口にした後の誘惑を抑えることは簡単ではありません。食べれば食べるほど食べたくなる性質は健康の敵であり産業の味方です。食べ物のない静かな環境であれば食事を抜いても苦痛を感じませんが、雑音と誘惑に満ちた環境では話が別です。同様にお金も理性が働きにくく、ひとたび贅沢を手にすると際限なき贅沢追求が始まり、欲が先行すると何のために食べ、稼ぐのかが曖昧になります。雑音に満ちた快楽より静寂のなかの平穏を選択したとき、人は本来の動機付けを思い出すのでしょう。
100マイルを旅する
複数のFB友達が参加する3年ぶりのUTMFが終わりました。旅に例えられる100マイルレースは、多くを犠牲にして自らの限界に挑み、大切な何かを学ぶ点において人生そのものと言えそうです。せいぜいその3分の1の距離しか走ったことがなくても得るものはありますが、ドラマが凝縮された100マイルのゴールに立つ感動はその3倍ではきかないはずです。今この瞬間に集中する感覚と最短距離にあるのがエクストリームスポーツだと思います。わが身一つを自然にさらす原初的スポーツが魅力を帯びるのは、失うものがないときに人は初めて何かを得るからかもしれません。必死に力を出し自分の足だけでやり切る姿は周囲にもエネルギーを与えます。過酷であるほど感受性は高まり、より深い内面との対話は、体験型旅行を超える自己変容の旅へとシフトしていくのでしょう。
外食の怪
昨日は学生時代の部活の集まりに出ました。30数年ぶりに会う人も多く、体型や顔つきが変わってしまい昔の姿を思い出せない人や、お互いの記憶が曖昧な話はあるものの、当時の人間関係は瞬時に戻ってきます。20年前を再現した場所で1週間暮らした75歳の男性16人の実験では、肉体年齢が10%、知能が20%改善するというカウンター・クロックワイズ研究が知られますが、昔の時間を取り戻すことは若返り効果があると思います。不思議なのは久しぶりに外食をすると、十分に食べているのに帰宅後に無性に空腹を覚えることです。人は普段の食事習慣を変えると満腹中枢を乱され、必要を超えて食べるようになるのかもしれません。妻も外食をした日は帰宅後に食べ直しているところを見ると、外食には過剰なカロリーを摂取させるメカニズムが働く何かがあるのでしょう。
次がないのが良い車
近所に建売住宅が並んでいて、真新しいベントレー、ポルシェ、メルセデスが駐車しています。一方で家の方は控えめに言っても普通の家で車の方が高そうです。四畳半共同トイレのアパートに住んでフェラーリに乗るライフスタイルがかつて注目されましたが、車を重視するのは日本人の特徴かもしれません。見せびらかす機会が限られる家に対して、車なら人前で胸を張れます。人にどう見られるかという他人軸の尺度で自分の幸福を確認することには無理があると思います。持ち物は人を表わし、若者が高級車に乗れば不相応と言われ、お金持ちが大衆車に乗るとケチだと言われ、無難な車に乗っていると無趣味な人だと思われます。高級ホテルに乗り付けるのは気おくれする少しくたびれたフィアットですが、次に乗りたい車がないことこそ良い車の条件だと思います。
限界を変える革命
国内トレラン界最大のイベントUTMFが今日スタートします。昔は人間が走れる限界が42.195kmだと聞きましたが、その4倍の距離を数千人が不眠不休で走ります。山岳レースの過酷さに加え、低体温症と熱中症のリスクを伴うレースに多くのFB友達が参加することに改めて驚かされます。エクストリームスポーツは人類史で前例がないくらい短期間で人間のパフォーマンスを大幅に向上させ、限界を完全に書き換えました。若手アスリートに有利なスピードレースとは異なり、中年以降の選手に勝機があることにも魅せられます。重要なのはエネルギー産生で、炎症を抑え回復を早める日頃の食事やレース中のエネルギー補給の方法こそが最高の武器になります。肉体を酷使しない現代社会において、人体の限界を変える革命の場はエクストリームスポーツをおいて他にはないのでしょう。
楽観的なミニマリストの暮らし
住宅を紹介するYouTubeを見ますが、マイクロアパートメントと呼ばれる狭小住宅を扱うNEVER TOO SMALLやThe Local Projectが好きです。小さな空間を暖かくて潤いのある暮らしに変えるセンスの良さが参考になります。1cmでも広さを求めた結果、すし詰め状態で立ち並ぶ建売住宅やワンルームマンションに破壊されていく街の景観を見ると、日本人は祖先が持っていたミニマルな暮らしに無限の可能性を見出す感覚を取り戻すべきだと思います。自動車としての必要最小限の機能を形にして、40年以上一度もモデルチェンジすることなく製造されたBMCミニのような住宅です。物量や広さを求めれば際限がなく、どこまでそぎ落とせるかによって自分に必要で大切なものがわかり、そこに本質が宿るのでしょう。ミニマリストの暮らしは失うものが少なく楽観的に生きられそうです。