台風により中止されたTJARは富山湾から日本アルプスを踏破して駿河湾に至る415kmを競う世界一過酷な山岳レースです。選手は約5万Kcalの途方もないエネルギーを消費すると言われ、これは男性の必要エネルギー量の23日分になりこれを数日で摂取することは不可能です。人体がなぜこのような離れ業が可能なのか、その体組成のメカニズムは解明されていません。TJARでは年々軽量化される装備品に注目が集まりますが、一番知りたいことは選手が何を補給したかです。自給自足にルール変更された今年はそのメカニズムを知る機会だっただけに残念です。狩猟採集生活における人類は一日20~40km程度の距離を走っていたとする説もありますが、人体は走るために最適化された肉体を持っていると思います。日本では古くから山岳修行が行われ、役行者が8世紀初頭に開いたとされる大峯奥駈道は吉野から熊野まで約170kmの山岳路を巡拝しながら生まれ変わろうとする擬死再生の修行を行いました。人体がこれほど大きなエネルギーを生み出せる謎が解明された時、われわれは今よりはるかに少ない食事で生きていけることに覚醒します。大半の人は歓迎しないでしょうが。