北アルプス縦走から戻り10日が経つとすでに次の山に行きたいという欲求が湧き上がります。不自由の多い山でのテント暮らしにこれほど引きつけられるのは、自然のなかで過ごすことが体内リズムを自然のリズムと同調させて身体を元気にするからだと思います。欲求には自然な欲求と不自然な欲求があり、食欲の大半が不自然な欲求であることは、現代社会に食源病が蔓延していることでもわかります。いつでも食べ物にアクセスできる時代には、食べないことに意思の力が必要で、食べないことの爽快さを知らなければそのモチベーションは生じません。知覚による経験は幻想的なものですが、そのはかない断片に人はしがみつこうとします。成人以降は細胞分裂の回数が減り、本来たいして食べる必要も寝る必要もないはずですが、人は世間並みの生き方や生活から外れることを恐れ無駄に食べ無駄に寝ていると思います。良い暮らしを求める欲求も同様で、人は自ら商業主義の餌食となり失う恐怖を手放せなくなります。山での生活が愛おしいのは、外的要因による幸せが真の喜びをもたらさないことを覚醒させてくれるからでしょう。