中国甘粛省白銀市近郊で開催された100kmのトレイルランニングレースで21人が死亡した事故はトレイルランニング史上最悪なだけでなく、まれに見る山岳事故となりました。2019年に日本で開催されたUTMFで2位の表彰台に立ったリャン・ジン(Liang Jing)選手をはじめ上位6人のうち5選手が低体温等で死亡する異様さが天候悪化の激しさを思わせます。大会は中止され700人が救助に向かったものの標高2,000m前後の人里離れた山岳エリアだったことから悲劇的な結果を招きました。エマージェンシーブランケットが必携装備ながら参加者の多くが短パンやTシャツなどの軽装だったことは山岳競技のあり方への議論を呼びそうです。難易度の高いレースだけに完走者全員に払われるはずだった賞金も無理を招いた一因とされます。日本の山でも東京なら真夏とされる6月や9月に低体温症による死亡事故が起きます。日の出に合わせて八ヶ岳の山頂で迎える穏やかな夏の時間ほど人生の充実を感じるひとときはありませんが、季節が変わると同じ山域でも立つのも困難なほどの吹雪が数分前の足跡を消し去ります。自然が牙を剥くのではなく原因はいつでも畏怖の念を失った人間にあるのでしょう。