遠い夏の記憶

今年は異例に遅い梅雨明けにより夏らしくありません。一方で台風がなく、扇風機だけで過ごすことができ身体は楽です。自然と親しむようになるとどの季節も好きになります。雪に閉ざされる真冬の無音の世界も、可憐な花が顔をのぞかせる雪どけの季節も、生命力にあふれる初夏の新緑もそれぞれに印象的ですが、とりわけ感傷的になるのが夏の終わりの風情です。夏の強い太陽によりセロトニンが分泌されることと関係があるのかもしれません。遠い過去の記憶を呼び覚ます匂いや音楽があるように、季節ごとの印象が特定の場所の記憶と紐付けられます。夏の終わりの蝉しぐれを聞くと思い出すのは日光中禅寺湖畔であったり、澄み渡る秋の空を感じると思い出すのが箱根の仙石原といった具合です。自粛生活でオンとオフが渾然となり夏休みが縮小される若い人たちが、遠い夏の記憶を失うなら気の毒なことです。

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