羽田空港に降り立ったカルロス・ゴーンが東京地検特捜部に連行された衝撃から一年が経ちます。日産の企業体質や日仏経済戦争もさることながらその贅を尽くした暮らしぶりが注目されました。諸行無常を最初に学ぶのは平家物語ですが繰り返し学ぶこの教訓ほど人生に生かされないものはありません。この世に存在する森羅万象はすべて、形も本質も常に流動する川の流れのようなもので一瞬といえども存在の同一性を保持することはありません。しかし人は形あるものにすがり執着し、それ故現代に至るまでこの物語が語り継がれるのでしょう。プライベートジェットや高級なヨット、豪華な邸宅、諸行無常だからこそ人はその一瞬の儚さにすがるのですが、執着が体を蝕むことには無自覚です。都市的な消費をゲームとして割り切っているうちは良いのですが、それが生きる価値と同化する錯覚に陥ります。この罠にはまるのは教養や社会的地位とは関係がないようで万事派手好みだったカルロス・ゴーンの教訓は印象的です。持ち物が増えれば失う恐怖が増えることに気づきません。富と名声を欲しいままにした権力者の晩年が恐怖に彩られる歴史はいつの時代も同じです。