禅の世界にいざなう深い森

気がつけば師走に入り、今は一年で日没が一番早い時期です。東京にいると華やかなクリスマスイルミネーションが年の瀬感を盛り上げますが、昨年まで暮らしていた阿武隈源流の森では本格的な冬が到来し、凛とした厳しさのなかにも浄い空気を感じる季節です。情報過多で執着にまみれた淀みに身を置くと、何が大切で自分がどこに向かっているのかも分からなくなりその不安を消すために刺激を求めます。他方で自身の内面と深く向き合うのに森の中ほどふさわしい場所はありません。日没の頃、寒々しい河原から川面を眺めていると一人でいても孤独に襲われることはありません。世間の常識や自分が過去に積み上げて来たもの、環境適合や生存競争といった世俗の価値観など、もうどうでもよくなります。静寂な時間は執着から離れ、悪い感情を脱ぎ捨てすべてを手放すことでしか本当に大切なものが姿を見せないことを教えてくれます。夜の帳が下り、冷たい風を頬に受け、川のせせらぎを耳にしながら森の香りで心が平静を取り戻すと、「禅」の世界に少しだけ入り込んだ気がしました。

Translate »