欲しいものリストを伸ばしただけ

昨日から甲子高原に来ました。玄関にある、昭和40年代から50年もの間働いてきた手巻きの柱時計は、しばらく来なくても律儀に時を刻み続けます。那須湯本温泉の鹿の湯に昨日も寄りました。高温浴槽に身を沈めると頭の上を冷たい外気が抜ける浴場の風情は東北の秘湯そのものです。湯船で至福の時を過ごすとき本音の自分に出会います。この温泉とブナ原生林を抜ける阿武隈川の清流があれば、それ以外の贅沢を一生放棄しても多分悔いが残りません。人はどこかで贅沢の本質を見失い、社会もあえてその履き違えを訂正しませんでした。多忙で空虚な現代を救うのは無為であり、自分を高揚させエネルギーを高める場所は山や森のなかです。今この瞬間に起きていることが人生の全てであり、未来が今より良くなるのを待つ必要も、金持ちになる必要も、自分の有能さを証明する必要もないと思います。幸福は金や名声や肩書で得られるものではなく、自身の内面が解釈するものです。20世紀を通じてもたらされた豊かさは満足感ではなく期待値だけを増幅し、はかない執着と欲しいものリストを伸ばしただけかもしれません。

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