退廃と堕落の空気

美しいメキシコの村で休暇中のMBAを持つビジネスマンが地元の漁師にアドバイスをする小話が好きです。午前中だけ漁をしてあとは昼寝をしたり友人と遊ぶ生活を聞いたビジネスマンは釣りの時間を増やし加工工場を作り最後は株式上場することを勧めます。その後はどうなるかと尋ねる漁師に、引退して故郷に戻り昼寝をしたり友人と遊びのんびり暮せば良い、と言う落ちです。金と名声しか人生を測る尺度がない現代を生きるわれわれに、この話は切実な問題提起をします。惑星限界を迎えてなお享楽に耽ける生活にしか楽しみを見い出せない姿は、食べるために吐く古代ローマの生活と同じです。搾り取った富を散財する事に情熱をかけた史上空前の快楽都市ローマはその極みとともに退廃と堕落の終焉を迎えます。非文明的な暮らしや人体の再野生化といった話に人々が拒絶反応を示すのは、無批判に是としている欲以外に信じるものがなくその幻想を追うからだと思います。若者が社会起業家や途上国支援に憧れるのは退廃と堕落の空気を敏感に嗅ぎ分けるからでしょう。

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