今と過去をつなぐ首里城

天皇即位やワールドカップの明るい話題の反面、度重なる水害に続き沖縄のアイデンティティである首里城まで焼け落ちた2019年は記憶される年になるのでしょう。歴史文化の象徴である首里城は記録に残るだけでも過去4度消失していて、日本軍の総司令部が置かれた沖縄戦で破壊された後は城壁や建物の基礎の一部を残す状態だったとされます。一瞬で焼け落ちた首里城には33年間で240億円が投じられており、原因究明もされない段階での再建ありきの議論は疑問です。世界遺産に登録されるのは「首里城跡」であり復元された建物群は含まれません。首里城は何度か訪れていて今年の3月も行きました。正直なところ自分に何かを訴えかける場所ではありません。かつては信仰の対象でもあり特別な場所のはずなのに復元された建物にはそこに宿る生命力とでも言うオーラが感じられないのです。何年か前にアンコール・ワットから40kmほど離れたジャングルにあるアンコール遺跡群のひとつベンメリアに行ったとき、その場所から離れがたいほどの情感があふれてきました。全貌が明らかになればアンコール・ワットを凌ぐといわれるベンメリアですが崩壊が著しく原形を留めていません。深い森に打ち捨てられた遺跡を通してこそ直に歴史とつながることができます。見世物ではなく今と過去をつなぐ首里城のあり方が議論されるべきだと思います。

Translate »