努力脳と快楽脳

トレイルランニングがまだマイナースポーツの頃は「何十キロも山を走って何が楽しいのか」と聞かれました。山を駆け下りる瞬間は理屈抜きに楽しいのですが、共感を得にくい理由は努力脳と快楽脳の違いにあると思います。快楽脳は生存本能に従う原始的な脳です。不快を避けることで生存確率を高めてきたのですが、身体を動かさなくても生きられる現代になると脳のこの性格は問題を起こします。骨は加わる力に抵抗する最適な構造を発達させ、重力負荷のかかる運動をするほど強くなりますが、安楽な生活をしていると衰えます。人体は鍛えることで骨も筋肉も脳も成長を続けますが、生存脳である快楽脳は余計な努力を嫌います。ハイキングの魅力は快楽脳が感じる快ですが、トレイルランニングは努力脳の快で、苦行の先にある自己実現欲求を求める感覚は理解されません。対象が運動であれ、勉強であれ、仕事であれ、努力すべき対象を辛いものではなく楽しいことに書き換える脳の反応選択が起こるから、何十キロどころか数百キロを自分の足で移動するレースが人々を引きつけるのだと思います。

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