食べない喜び

昨年盛り上がった人生100年時代というキーワードは鳴りを潜めた印象があります。人の寿命は先進国を中心に伸び続け、2007年生まれの日本人の半分は107歳まで生きると予測されますが楽観的に聞こえます。医療技術が進歩しても人生100年時代は来ないと思います。長寿の頂点にいる今の日本人は、大正・昭和の「欲しがりません勝つまでは」の窮乏時代を生きた世代で、少ないカロリー摂取と食物繊維や乳酸菌、ビタミン、ミネラルを摂る当時の食事が長寿に適することは世界的な合意が得られています。一方の現役世代は、大量生産される発がん物質まみれの食事、栄養価の低い野菜、子供の頃からエナジードリンクを飲みグルコーススパイクを繰り返す食習慣など、戦後いち早い食の米国化で子供が先に死ぬようになった沖縄の悲劇を繰り返しています。美しい花を咲かせるには大量のエネルギーを使うように、美食やアルコール摂取は体を消耗させる一種の自傷行為ですが、飲食による快楽を礼賛する社会において食べないパラダイムは受け入れ難いものです。誘惑の多い飽食時代の今はむしろ食べないことが善であり、食べないことによる内面の静けさに喜びを見出すことで食べる感覚が研ぎ澄まされると思います。

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