悟りを求める冒険旅行

登山者の少ない南アルプスではハイカー同士の接点が濃厚になり、そこに生き様を感じます。20kg超の荷物を背負う伝統的な縦走スタイルが今も主流な一方で、2、3kgの最小限の装備で肉体の限界に挑むタイムトライアルも見かけます。三伏峠下の鳥倉ゲートから赤石岳までのコースタイム片道19時間10分を往復する人に会いました。40時間近いコースタイムを日帰りするなど3,000メートルを超える登山の常識では考えられませんが、これらの人は例外なく世界最長415kmのトレイルレースTJARに向けたトレーニングです。日本海から太平洋に至る3つの日本アルプスを含む累積標高27,000mを、サラリーマンが取得可能な1週間(8日以内)の休暇で縦走するレースは、自分の限界を引き出す修行の場に他なりません。注目を集めるレースとなれば簡単に投げ出すことができなくなります。欲望を断って心身を鍛練し浄化する点において、日本古来の山岳信仰を基礎とする修験道と同じです。我欲にまかせた快楽や安楽な生活に耽る人が多いなか、真理や悟りを求める刺激的な冒険旅行こそが人間本来の姿を思い出させてくれると思います。

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