飢えは止まらない

Netflix映画「ハンガー:飽くなき食への道」を見ました。タイの高級ケータリングサービスを成功させたスターシェフと、望むことなく家業の庶民食堂で料理をする主人公を通して、食べる行為の背景にある飢えについて掘り下げた作品です。セレブご用達のスターシェフが、抑圧された幼少期への復讐のために料理をするのに対して、食堂で働く人生から抜け出したいと願っていた主人公は、やがて家族への愛こそが料理の本質だと気づきます。愛のこもった料理など貧乏人の言い訳、と切り捨てたスターシェフもやがて没落を始め、主人公も華々しい世界から大衆食堂へと戻る展開にはどこか安心できます。タイの格差社会を背景に展開する迫真のドラマが伝えたかったのは、貧しいものは飢えを満たすために食べるが、カネに余裕ができても飢えは止まらない、というスターシェフの言葉なのでしょう。

目利きの力が人生を豊かにする

欧州株式市場では高級ブランド銘柄が売り込まれ、250億ドル以上の時価総額が吹き飛んだとブルームバーグが伝えます。欧州全般にインフレが需要を下押し始め、高級ブランド株が総崩れとなった格好です。加えて売上高の2割を占める中国の景気減速懸念が圧迫し、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンは今年のピーク時には500億ドルを超えていた時価総額は、400億ドルを割り込み年初来最安値となりました。人生には飢えを満たす必需品と人生を豊かにする嗜好品があり、後者は経済力の影響を受ける故に人は金に執着します。しかし、ブランドに代表される嗜好品は他人の物語を消費しているに過ぎず、自分の価値軸を持てない発展途上国型消費と言えます。一方で、山の用具は命に係わるので、ブランドは品質を担保してくれる必需品でもあります。嗜好性と機能性の境界は曖昧ですが、目利きの力が人生を豊かにするのでしょう。

最後の日本固有種

最後の日本固有種であるセンチュリーが、クロスオーバーとも言うべき新型に進化しました。ロールス・ロイスやマイバッハがSUV化される時代ですから驚きはありませんが、当のトヨタはSUVと呼ばれることを嫌い、センチュリーならではの品格と快適性、機能性を兼ね備えた継承と進化だと言います。V6 3.5L プラグインハイブリッドシステムのパワーユニットと、FFプラットフォームベースの4WDシステムは、最上級のアルファードが欲しかった人も含めて対象マーケットが広く、グローバル市場でも戦えそうです。かつての日本車の枕詞であったプアマンズと呼ぶ必要がなく、世界の高級車市場で真っ向勝負ができるでしょう。世界の自動車市場は全体主義的なEV化の流れが支配しますが、日本のお家芸とも言えるレシプロエンジンこそが最も合理的に環境性能を実現できることを、最高級車セグメントで世界に示してもらいたいです。

ブティック化された個人商店の時代

近所のスーパーがこの夏に閉店となり、昔からある八百屋さんを使うようになりました。そのスーパーは特徴がなく、強いて言えば見切り品と日配品のセール以外に魅力がなく、閉店は時間の問題だと思っていました。スーパーは生鮮の仕入れの力が勝負だと思いますが、コンビニやミニスーパー、ネット販売などとの競合環境変化への適応ができず、その存在価値が希薄化しているように見えます。一方で八百屋さんは、扱い商品数こそ少ないものの、目利きされた魅力的な商品が並び、思い切った値段になる見切り品も魅力的です。よく買ういちじくは4個400円の日もあれば同じ値段で8個の時もあり、ダイナミック・プライシングにより収益を最大化しています。形勢が逆転し、リアル店舗においてはブティック化された個人商店の時代が始まるのかもしれません。

オフグリッドのライスタイル

以前の理想の暮らしは、シンガポールあたりで、高級ホテルが運営する洒落たコンドミニアムに暮らし、美味しいものを食べる日々でした。今の理想は自然豊かな田舎で、日々体を動かし、17世紀の元禄時代のような食生活をすることです。美しい自然が近くにあり、新鮮な森の空気で深呼吸をする日常に憧れます。振れ幅が大きいのは、執着こそが不幸を呼び込む原因との結論に至ったからです。加えて食生活を自給自足し、エネルギーや水もオフグリッドで供給し、仙人のようにほとんど消費せずに暮らすことが理想です。現代を生きる99%の人にとっては生きる意味を見出せない、唾棄すべき生活だと思いますが、多数意見が本質とは限りません。世間で言う良い暮らしは、常に比較の対象となり、追加的な支払いなしには喜びが得られない消費社会は、聖書の言う地獄に続く広き門のような気がします。

健康は金で買える?

自分の年代には健康を金で買えると思っている人が多いためか、サプリメントのインタネット広告が目立ちます。化学的に合成されたサプリメントの吸収率は低く、プラシーボ以上の効果はないと思います。一方で、有効成分よりも凝固剤などの添加物による害が大きく、肝機能にダメージを与えるリスクや、サプリメントを使わないグループのほうが長生きといったデータに加え、大量摂取がガンの原因になるとも指摘されます。メラトニンのように本来の体の生産能力低下リスクや、オートファジー機能を妨げる疑いのあるものにお金を払う気にはなりません。生物は生命維持に必要な栄養素を体内で合成できるように進化しており、新鮮な食材をバランスよく少量食べればサプリメントは不要であり、むしろ有害でしょう。唯一摂取しているサプリは自家製の黒ニンニクで、あとは納豆や味噌、ぬか漬けなどの栄養食品を食べれば十分でしょう。

草刈りは幸せになるためのアクティビティ

昨日は草刈りで福島県の南会津町に行きましました。芝刈りは世間ではゴルフを指しますが、草刈りも同様に爽快で、バッテリー式草刈機に変えてからはレジャーの一形態になります。しかし、冬場は2m近い積雪のある豪雪地帯とは言え、日中の暑さは東京とさほど変わらず、身長よりはるかに高い葦の藪を払うときはほとんど格闘技のようで汗が吹き出します。登山道の藪を払うときと同様、人が通れる道が現れると達成感があります。屋外で体を動かす爽快感と、ある種の達成感を得ることはアウトドアスポーツと共通しますが、その成果を他の人とも共有できる点はさらに有意義かもしれません。幸せに関係する3つの神経伝達物質に例えるなら、爽快感はセロトニン、達成感はドーパミン、他の人との共有はオキシトシンと言え、草刈りは幸せになるためのアクティビティなのかもしれません。

生活を変えてくれる?

それが幻想だと分かっていても、キャンピングカーが一台あれば生活を一変させてくれるような気がします。それでもキャンピングカーに食指が動かないのは、演歌調ともいうべき日本製のデザインの悪さです。一方で上品に見えるドイツあたりのコーチビルダー製は、おいそれと手が出せない値段です。先月末に公開されたシトロエンタイプホリデイズキャンピングカーは気になる存在です。かつてのシトロエンバスを彷彿とさせるパイクカーは、先代の根強い人気もあって支持を受けそうです。なるべく生活をシンプルにしたいので、映画ノマドランドのようなキャンピングカー1台の放浪生活に憧れますが、フォーカシング・イリュージョンは必ずしも上昇志向だけの現象ではないのかもしれません。その本質は、自分以外の何かが自分の生活を変えてくれるかもしれない、とのはかない期待なのでしょう。

移動が特別な体験に

菅前首相が解禁に言及したことから、ウーバーなどのライドシェアの議論が再燃しています。安全性と利便性の議論はかみ合わず、業界と労働組合の与野党へのロビー活動の結果、世界の趨勢とは逆行する不便な国になっています。安全性を盾に取る業界は、1970年代の白タクの感覚で、公共交通としての役割を強調します。双方の議論は感情論になりがちで、二種免許解禁で本当に事故が増えるのかは未確定です。古い業界体質が政治利権と結びつき、過疎地における移動の機会を奪っているように見えます。その結果免許返納も進まず危険な運転をする高齢ドライバーを見かけます。団塊世代のドライバーが引退する一方、いつ自動化されるか分からないタクシー運転手を目指す若者が増えるとも思えません。ペナンで乗ったライドシェアのドライバーはアーティストで、午前中は運転、午後は創作活動をすると聞き、移動が特別な体験になりました。

ドローンが世界を変える

ウクライナ戦争のゲームチェンジャーはおそらくドローンでしょう。8月26日にロシア西部クルスク飛行場でミグ29とスホーイ30戦闘機の合計5機、地対空ミサイル発射台2基とS300防空システムを破壊したドローン攻撃が、1機3,000ドルの段ボール製ドローン初の実戦投入だったことは世界を驚かせました。ウクライナ保安庁は、攻撃に動員された段ボール製ドローンは16機あり、このうち3機が撃墜されたと説明しました。2.4kgの機体に3kgの積載量を持ち、時速60kmで120kmの距離を飛ぶとされます。工具とテープ、接着剤で組み立て、翼と胴体をゴムで固定されたドローンは、手投げで離陸した後はアンドロイド端末で操作され、GPSに加えて電波妨害に対抗できる飛行用ソフトウエアが搭載されると言います。新興企業によるドローン製造のスピードが戦争を決するなら、軍産複合体の力を削ぐことができるかもしれません。

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