正月は健康を脅かされる危険な季節と言えます。何もせずに食べるだけの生活になりがちで、売られる惣菜やおせち料理も食料保存の知恵ではなく保存料が添加されます。常時食べ物が手に入る現代の食料事情は長い人類の歴史においてごく最近になって実現され、魅力的な料理と偽りの空腹感が蔓延する現代において食べないと言う選択肢はありません。高次の幸せは離欲の幸せですが、現代人は必要を超えて食べ、その食生活は執着を生み感謝はなくなり、やがて味わうことさえしなくなります。食べれば代謝は低下し活性酸素が発生し体は老化しますが、旺盛な食欲の前では健康リスクは過小評価され、われわれを喜ばせる食べ物が悪魔であることから人は目をそむけます。正月太りを解消しようと無理な運動をすれば生命の危険を犯すことになります。スポーツクラブにおいて心臓発作などの事故が一番多いのは正月明け最初の営業日だとインストラクターに聞いたことがあります。執着ばかりを生む世俗から離れ、穏やかな心を取り戻すことが精神的インスピレーションを生むためには必要で、一年の最初ぐらいは何不自由ない普段の生活を感謝する機会にしたいものです。
年: 2020年
誰もがほどほどに幸せ
多くの人が神社に行き日本的な食事をする正月は唯一日本人らしく振舞う機会です。和食や禅が世界で評価される一方、住宅から畳が消えるなど日本的な暮らしをわれわれは捨てています。自然に恵まれ共存してきた日本ほど幸せに近いライフスタイルを持つ国はないと思うのですが、日本の伝統よりアメリカ発のポジティブサイコロジーなどの流行を有難がる風潮もあります。本音と建前の使い分けや遠慮や忖度ばかりが注目され、他人の目を気にする不幸な国民という文脈で語られる日本ですが、何事にも控えめな謙虚さこそが美点でしょう。清貧の思想のように日本の幸せは控えめで決して裕福である必要はありません。高度経済成長期が1980年代に入りハイソカーブームやシーマ現象が起こり、皆で豊かになるのではなく自分だけが豊かになりたいというエゴが頭をもたげ始めた頃から日本人は謙虚さを失ったと思います。日本が世界で評価されるのはトヨタ製品のクオリティばかりでなく、嘘をつかない、約束を守る、人を見下さないといった日本人の美徳に発する信頼にあるのに、人より優位に立ちたいという卑しさが高まっているように感じます。幸福感をもたらすセロトニンの分泌量は一定量で誰の人生もほどほどの幸せという実感に落ち着くのですが、物質的豊かさに執着し消費に意味を見出そうとするほど離欲の幸せという日本の良さは失われていくと思います。
途上国こそ日本人の生きる場所?
年末のビッグニュースはカルロス・ゴーンの不法出国でしょう。ゴーンの言う「不正に操作された司法制度」の日本から公金の横領天国で政治と経済の混乱が続くレバノンへの逃亡はレバノン市民の間にも賛否があるようです。ゴーン事件が投げかける論点の一つは日本的経営の総括だと思います。世界の創業200年以上の企業5千数百社の56%強が日本にあり、日本的経営の最大の特徴は踏襲の文化と老舗経営にあります。間接金融による特有の資本構造も長期的成長を前提に構築され継続性を重視する風土に、バブル崩壊の自信喪失から欧米流の個人主義と収益重視の経営を持ち込んだことが誤りだと思います。終身雇用を志向する日本企業が教育を重視してきたのに対し、80年代以降日本に持ち込まれた経営手法は手順重視の欧米流のものばかりですから適合するはずもありません。明治維新前後に日本を訪れた外国人が一様に驚くのは貧しいながらも卑しさのない暮らしぶりだとされます。ソニーもホンダも松下も戦後の荒廃からスタートして世界有数の企業になりましたが、物不足の時代にこそ日本人は力を発揮すると思います。経済的に豊かになった今の日本は卑しい人が増え、お金がないことを過度に不安に感じる社会になりました。日本人が活躍できる場所はお金になりそうもない途上国なのかもしれません。
一歩一歩前に
あけましておめでとうございます。達成した試しがない今年の目標設定は止めました。人生は無情にも日々短くなっていきますが、そのスピードを加速するのは今に安住する惰性的な生き方です。その流れを止めるのは新たな行動しかなく、一年でどれだけ職業人としてのスキルが向上したかが重要ですが、環境変化に対して十分なものではありません。新たな人生の展開をもたらすきっかけは辛さやストレス、プレッシャーが原動力になり前に進むしかないと思います。安住を求め守りにまわった瞬間から人生は先が見えて坂道を下り始めます。昨年はトレイルレースにほとんど出ずわずか50kmほどを走っただけで、体と心の充足は大きなテーマです。旅館経営の再開は重要課題ですが、トレイルレース同様遠いゴールでも一歩一歩前に進みたいと思います。進歩は常に不安や不快な状態から起こるもので、少しでも行動をすればやがて事態を好転させるチャンスを掴むことができるのでしょう。自分を変える挑戦に積極的に動き前進することだけが不安や悲しみを癒すことができ、あれこれ悩む前に行動する以外に答えを見つける方法がないことをこの3年で学びました。