古民家に魅せられる理由は、郷愁を誘いやすらぎを感じるからだと思います。自然と共生し暮らしていた江戸時代の趣を残す妻籠宿や大内宿に、観光客が押し寄せることでも分かります。たまたま時代から取り残された旧街道沿いの街並みが、粗製乱造された戦後の乱開発を免れ、自然と調和した日本らしい風景を今に伝えているのでしょう。木や紙といった自然素材で作られた古民家の数は、150万とする試算もありますがその多くが急速に失われ、風景に溶け込むたたずまいを今後作り出すことは困難です。都市に美しさを感じることはありますが、その多くは構造物が消された夜景であって、そこには一時の感動はあっても安らぎはありません。快適さを合理的に追及した結果である現代の住宅に、致命的に欠落するのは自然と共生する姿勢であり、今の街並みが醜く見えるのは、人間のエゴだけがぶつかりあっているからかもしれません。