日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏に対しレバノンの裁判所は、2019年の逃亡以来居住する29億の豪邸から退去するよう命じました。日経新聞の私の履歴書は、ビジネスジェットの機内の描写から始まりました。何年か後に日本に到着したビジネスジェットで逮捕されるとは、想像もしなかったでしょう。ミシュランからルノー、日産の再生へと華々しく活躍した前半生に対して、今はヒズボラが支配する戦時下とも言えるベイルートで、家からも追い出されようとしています。グローバルスタンダードの経営がもてはやされた日本で、日産を再建してくれた聞き慣れぬ名の英雄に、日本中が熱狂しました。しかし日本人が彼に対して一斉に手のひら返しをしたのは、煌びやかな社交界の眩さの背景にある金への執着に、穢らわしさを感じたからかもしれません。彼が日本人に違和感を覚えるとすれば、金銭的な不浄を忌まわしく感じる、古来より続く観念体系でしょう。