昨日は甲斐駒ヶ岳(2,967m)に登りました。深田久弥も日本十名山を選ぶならこの山は落とさないと言ったとされ、独立峰のような山の形は神々しく近づきがたい威容を誇ります。竹宇駒ケ岳神社から標高差2,200mを上がる黒戸尾根は急登が長いだけでなく、後半に、ハシゴと鎖の連続するスパルタンさからハイカーには敬遠されるルートで、静かな山歩きを楽しめます。神社の裏手から吊橋を渡り樹齢数百年クラスの巨樹の森を抜けるとやがてブナ原生林が始まり、さらに高度を上げると苔むした美しい庭園が続き、後半は垂直に登り一気に高度を上げる変化のあるトレイルは長くても飽きません。開山以来歩き続けられて来たルートは登山道というよりは参道のように美しく、しかし後半は垂直の岩をハシゴや鎖で高度を稼ぐ修行の道です。登山道具もない時代の祖先が人を寄せ付けない巨石の壁に挑むことは、神に近づく行為だったのでしょう。1907年に陸軍参謀本部の命令で測量のために初登頂したと思われていた剣岳の山頂では平安時代初期の錫杖頭が発見されました。整備された登山道を使うわれわれも、峻険な山に分け入った行者と同じ景色を見ているはずで、信仰の山は時代を超えることができます。