粋と野暮の境界


塩尻の市街地から近い、朝日そばふじもりに行きました。築100数十年の養蚕農家を改修して、13年前に開業した蕎麦店は、木組みと土壁という昔ながらの工法で10か月かけて再生したものです。設えの細部に至るまで空間が繊細に作られていて破綻がなく、接客にも客をもてなそうという気持ちが表れています。唯一残念だったのは店中に響くような音を出してそばをすする客の存在です。静かにそばを味わうために、こだわって生み出した世界観と空間価値を、無粋に壊しています。蕎麦をすすって香りを楽しむ行為に、日本の食文化は寛容です。しかしどんなに音を立ててもよいという免罪符ではなく、店の雰囲気を破壊するのは野暮というものでしょう。私の観察ではこの手の客は中高年男性が圧倒的に多く、断片的な作法の知識で、大きな音を出せば粋と勘違いをし、その場に合わせて振る舞うという、もっと大切な作法を理解していないのだと思います。

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