K2に挑んだ平出和也氏と中島健郎氏がなぜ遭難したのかを考えます。世界で最も難易度の高い魔の山K2西壁の、未踏ルートのアタックのために6年の準備期間を重ねて来た本人たちが、誰よりも危険を知っていたはずです。あまりの難易度の高さから誰も手を付けなかったルートに命を賭した挑戦を、表層的な美談で片付けることには抵抗があります。山は古来より人類が直面してきた圧倒的な存在であり、命のはかなさと無力感を教えてくれました。冒険家と呼ばれる英雄は、極限まで危険を冒す存在であり、その結末はあまりにも冷酷な必然なのかもしれません。誰よりも自然に対する畏怖の念を抱いたはずの二人が、それでも挑むことを常識的に説明することは困難です。20世紀までの冒険は、世界を縮め人類の進歩に貢献してきた側面があったことは確かです。われわれから英雄を奪った21世紀の冒険のあり方は、見直される時期に来ているのかもしれません。