帝国ホテル一軒しか宿がなければ上高地はもっと素晴らしい場所だった、と言えば関係者に怒られますが、そんなことを思ったのは昨日、雲ノ平山荘に泊まったからです。山好きの間で秘境として知られる景色の美しさは掛け値なしですが、その評判を伝説の域に高めたのはこの山小屋の存在が一因でしよう。「黒部の山賊」に書かれた戦後の混乱期に山小屋を建てたフロンティアの物語に思いを馳せながら、なぜか下界より安いハンドドリップのコーヒーを飲み、テラスで眺める景色はプライスレスで、3倍以上の宿泊料金を取る上高地帝国ホテルよりもゆったりと時間が流れます。LPレコードが響く食堂でのおかわり自由の石狩鍋も絶品でした。これまでは、山小屋よりプライベートが確保されるテント派でしたが、それは日本にセンスの良い山小屋がないからだと思います。