本来の故郷に帰るため

「人はなぜ山に登るのか」の答えは登山スタイルの数だけあると思います。「なぜならそこにエベレストがあるからだ」と登山家のジョージ・リー・マロリーが言ったのはユーモアでしょうが、戦時下の航空機エンジン技術者から転じて雲ノ平山荘を創業した伊藤正一氏は「背後に社会があるからだ」と言いました。山に登る理由は主に5つあると思います。絶景との出会いなどの爽快さ、スリルや刺激を満たす冒険心、魅力的な人たちとの出会いや連帯感、心身を鍛錬し挑戦する達成感や自己肯定感、そして無心になり内なる声に従う心の平穏だと思います。夜の7時には静まり返り、朝3時前には活動が始まる山での生活は人間本来の姿だと思います。天候に感謝し、自分が背負える範囲で生活する全てが有難く、絶景と引き換えに大自然のなかで弱さと向き合い、デジタルデバイスから離れ、まさに人間本来の故郷に帰ることが山に登る理由でしょう。

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