普段は外食をほとんどしませんが、旅先での食事は大きな楽しみです。旅行中も一日一食ですが、他方でグルメ情報を血眼で調べることもありません。一番印象に残った食事は九州の帰り道に三原市で泊まった宿です。1泊2食4,900円という破格の値段は戦後まもなく建てられた施設が老朽化しているからですが、それを懐かしい昭和の風情と受け止めるのはこちらの勝手です。大金を払えば期待が先行する反面、この値段なら何を出されても平静でいられます。しかし予想を超える料理に手抜きはなく、朝夕に出された脂の乗った焼き魚の美味しさは格別でした。良い食材があればあとは基礎調味料の問題であり、ヒトの美食追求とは詰まるところ塩と砂糖と脂肪を求めているだけでしょう。前者は身体の維持に必要であり、後者はかつて貴重な食糧であった果物を見つけた時の麻薬的な歓喜の記憶だと思います。グルメ情報の氾濫は過剰な期待と執着を増やすだけのように見えます。