晴天の週末ですが花粉症で山には行けず、開高健ノンフィクション賞を受賞した「デス・ゾーン-栗城史多のエベレスト劇場-」を読みました。日本人初となる世界七大陸最高峰の単独無酸素登頂を目指しながら、8度目のエベレスト挑戦で2018年に滑落死した登山家の軌跡を描いた作品です。謎と矛盾と誇大広告に満ちたネット時代の登山家は、山を劇場に変えた希代のエンターテイナーでした。登山暦2年でマッキンリー登頂に成功したビギナーズラックと、彼に群がったメディアが悲劇を生み出したようにも見えます。実力を疑問視されながらありえない難関ルートを選択したのは、ルールがない登山の盲点であり、他のスポーツなら成立しないゲームです。お笑いタレントが8,000メートル峰に登る時代に入ると潮目が変わり、登山中継で時代の寵児となった彼の元からメディアが去り、資金集めに窮するようになりました。もぬけの殻となって生きるより、天国に一番近い場所で英雄として死にたいと思ったとしても不思議ではありません。