無限の小さなもし

今月に入って存じ上げている方の山岳事故での訃報を聞きました。経験豊富なベテランであっても自然の力の前では無力です。しかし事故は不幸な運命のめぐり合わせではなく、生死を分ける状況の間には無限の小さな「もし」が存在します。5年前に旅館の近くで起きた雪崩事故のときも、前日からの積雪量はこの季節としては異常な降り方でした。もし引率者がその異常さに第六感を働かせていれば、多くの若い命は奪われなかったと悔やまれました。それは結果論だと言われるかもしれませんが、少しの勇気で被害を回避し、犠牲を最小限度に留めることのできた危険は人類史上無限にあったはずです。現代人は戦争でも起きない限り、狩猟時代のような生死を分けるストレスにさらされることはありません。それゆえ、人は命がけのエクストリームスポーツに没頭し生きる意味を見出すのかもしれません。他方で、多くの著名なアルピニストが山で命を落としているように、どれほど達観の境地に至ろうとも、最後は物理法則の審判に逆らうことはできないのでしょう。

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