控えめな旅

本来であれば卒業旅行などの旅行シーズンですが、盛り上がりは控えめです。一方で「控えめな旅」という風潮も悪くないと思います。短期集中で非日常を求める豪華な旅行に対して、平穏な日常の静けさを求める旅の達人は松尾芭蕉でしょう。日々旅にして 旅を栖とす、と詠み、過ぎ去る日常に二度と還らぬ旅人を重ねました。これといったイベントもない平凡で静かな当たり前の生活に、普通の幸せを感じられる感受性こそが旅を住まいとする秘訣だと思います。船頭として舟の上で人生を過ごし、馬子として愛馬と老いていく毎日が旅である、という感性は今もって新鮮です。旅は人生を探求する手段であり、内なる旅をするために芭蕉は人生の後半に旅を始めたのでしょう。大半の人にとっての旅は最も高価な消費の対象であり、増幅された欲や執着が人を囚われの身にします。ザックひとつで自分の足で辿る荒行のような旅に憧れるのは、それが自分の内面を知る道だからでしょう。

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