移動のために食べる

冬が目前の今頃は渡り鳥の季節です。越冬のためにシベリアからやって来るコハクチョウやツルと、日本で繁殖して南半球に戻るツバメやオオルリなどです。渡り鳥に興味が尽きないのはその驚異的な身体能力と省エネ設計で、世界最小のツルとされるアネハヅルは氷点下30度のヒマラヤ上空8千mを飛び、アジアに生息するインドガンは、追い風や上昇気流の助けをほとんど使わず自らの筋力だけでヒマラヤを一気に飛び越えると言います。とくに興味深いのが昨年9月にオオソリハシシギの群れが、アラスカからニュージーランドまでGPS上の飛行距離1万2,854kmを11日間ノンストップ、不眠不休で飛行したことです。しかもオスの体重は200から400グラムしかありません。これほどの超長距離を飛べるメカニズムの解明はこれからですが、渡り前に倍ほどの体重に太り、飛行中のエネルギー消費が毎時標準体重の0.41%と少ないことが分かっています。渡り鳥の飛翔筋はミトコンドリアが多いことで知られますが、脂肪を溜め込む人間も本来は無補給でかなりの距離を移動できるはずで冒険心を掻き立てられます。移動のため、すなわち生きるために食べることを渡り鳥は思い出させてくれます。

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