昨日のように日本工学院に出講する日は一日一食で食欲について考える機会になります。食べ物を見ればお腹はすきますしいくらでも食べられると思うのですが、一方で空腹は曖昧な欲求でやり過ごすことも忘れることもできます。実際には一日一食でも不満も不都合もなくむしろ活力は増すのですが、長年三食の生活を続けてきた習慣と郷愁から多くの日は二回食べます。この妥協の原因は脳の部位によって反射的、感情的、論理的な反応が生まれるからで、前者は意志とは無関係に人の行動を支配します。食べないことを快と思えるようになると意志が芽生え、従来感じていた食欲が反射的、感情的な欲求であり幻想だと分かります。食事を減らした日の身体の軽さと次の食事の美味しさを知ると食欲という原初的な欲求と適度な距離を保てるようになり、物欲や我執からも遠ざかることができると思います。人は心の中に作り出した幻想を、それがあたかも恒常不変の実体であるかのように考え執着しますが、食欲と冷静に付き合うことが心身のバランスを整えるのでしょう。