ラブラドールと権現岳に登りました。人間に付き合い不平も言わず無心について来る姿を見ると野生の偉大さを考えずにはいられません。人間が鎖に掴まる岩壁を、教えられたわけでもないのに器用に登り、登れなければ迂回ルートを探し出します。愚痴も言わず常にご機嫌で、人間よりはるかに高い運動能力とスタミナでぴったりと寄り添います。野生という言葉は野蛮や未開と同様に尊敬の対象ではありません。野生を失い文化的になった人間は、持ち物と雑念と余計な脂肪が増えただけで、今更マインドフルネスを学ぼうとします。犬はお産の仕方から人間との付き合い方まで、何も教わらないのに何でも知っていますが、何でも知りたがる人間は無知なままです。常に雑念に支配されデフォルト・モード・ネットワークが脳を疲労させ、何事にも執着し、損得を考え、常に不機嫌でいつも人目が気になり心は休まりません。人間の脳と筋肉組織がピークを迎えたのは7万年前から1万年前とされ、農耕中心の共同体をつくり定住してからは体力も頭脳も衰えたと考えられます。先進国で野生回帰の気運が高まるのは、人間社会を生き抜くために、断片化された五感を研ぎ澄ます必要が生じたからでしょう。