手抜きと品質のセンス

旅館の朝食は以前からその重要性が問われてきましたが、人手をかけずに半製品などにより品数で満足させる流れが主流でした。一定規模の施設ではバイキング形式を採用し、品数勝負で地元の食材や郷土料理を出すという基本形があったと思います。業界誌の朝食特集のキーワードを真に受ければどこも似たものになるのは必然です。皮肉なことにもっとも印象に残る朝食はニューヨークのホテルで、そこはオレンジジュースとコーヒー、クロワッサンしかありませんでした。品数が少な過ぎて印象に残っているわけではなくそのクロワッサンがあまりに美味しかったことです。業界論理に支配されると大胆な発想の切り替えが難しくなくなります。長年業界慣習を踏襲すると「そんなことできるはずがない」という思考に陥ります。あちらを立てればこちらが立たずでがんじがらめにされたことが産業を衰退させたと思います。その点で昨日泊まった旅館の朝食はセオリー通りながら、業務スーパーなどの出来合い惣菜を使うことなく、作り置き惣菜をうまく使いながら、地元産のお米と絶妙な温泉卵などポイントをはずさず「美味しい」と言わせます。手抜きと品質と原価管理の絶妙なバランスは創業116年の為せる技でしょう。利用者の評点も高くセンスの良さを感じます。

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