今こそ生きる戦争の記憶

戦中世代が減る今の社会にとって戦争はテレビで見るニュースに過ぎません。自分が生まれる20年前は太平戦争の真っ只中でしたが、幼少時に傷痍軍人を街で見かけた記憶がある程度で、痕跡を消された戦争はミステリアスな存在です。戦争の痕跡を見たくて10年ほど前にパラオ本島から60km離れたペリリュー島に行きました。関東軍の精鋭と米海兵隊の精鋭第一海兵師団が激突した狂気の戦場には、急峻な岩山に作られた500以上のトンネル陣地があり、旧日本軍の弾薬やビール瓶が散乱していました。日本側が水際撃滅バンザイ突撃という短期決戦から長期持久戦に切り替えたことで米国史上最悪の死傷率を海兵隊に強いました。長くて4日と言われた小さな島を、食料も水も乏しいなか74日も守り抜いた精神力は驚異的です。戦争中は正当な評価を受けることのない奇跡的な偉業がたくさんあったと思います。逃げ場のない絶海の孤島に立ったとき、戦争の不気味さを少しだけ感じました。われわれの日々の悩みなど、生きたいと願いながらその選択肢のなかった若者の犠牲と比べようもなく、生きることが許される時代にこそ戦争の記憶は生きると思います。

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