手軽さの代償

昨日は奥秩父縦走路にある将監小屋のキャンプ場にラブラドールと泊まりました。30kmほど歩いて到着したときの達成感は旅の醍醐味と言えるでしょう。夕方は雷鳴が轟き、夜は澄み切った空に美しい三日月が浮かび、森の奥からは野生動物の声が響きます。インスタントの味噌汁がこの上なくおいしく豪華な料理は何も要りません。グランピングブームにあまり魅力を感じないのは、手軽なキャンプとは都市の贅沢さをそのまま自然のなかに持ち込むことに他ならないからです。テントで泊まれば、寝心地は悪いし夜露で不快な思いもするし、料理は粗末ですがこれで十分と言う謙虚さを思い出させてくれます。手軽さの代償は多くのものを失い、とりわけ身近な幸せに感動し気づくと言うことを無視します。自動車で都市生活の便利さを持ち込むのではなく、自分で運べる荷物の範囲で生活することにむしろ贅沢さを感じます。スーパーで買ったバームクーヘンで過ごす食後のお茶の時間がこの上なく贅沢に思えるのは、自然のなかで過ごすことで欠乏こそが人間らしい生活のデフォルトだと気づくからだと思います。ブナ林の枯葉の地面の上に寝転がって空を見上げることなど小学校以来のような気がします。

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