普段は一人で山に入りますが、昨日は妻とラブラドールが一緒でした。八ヶ岳稜線の静かな樹林帯に来ると自分が戻るべき場所に戻ってきた安堵感があります。人間が感じる最も美しい風景は自然の中にあると思います。かつて建築家の隈研吾氏はスリランカの建築家ジェフリー・バワを評して「庭の建築家」と呼びました。そして建築の時代が終わり庭の時代が始まると言ったように、都市の時代が終わり森の時代が始まる気がします。生産手段を持たない都市が生み出せる唯一のものはお金ですが、その前提にあった集積と消費が機能不全を起こすと、人間が本来いるべき場所に戻る時代へと向かうのかもしれません。都市は麻薬的な刺激で人を魅了しますが、自然のなかで感じるフロー的な感覚も脳内の働きはおそらく同じだと思います。どちらも我を忘れ夢中にさせますが、違いはそれが外部から操られた結果か、内部から自然発生的に生まれるかです。都市という閉鎖空間における刺激は洗脳に近いものですが、山を走るときに感じるフローは異次元とつながる感覚です。都市に神秘を感じることはありませんが、自然はいつも神秘にあふれていると思います。