中世、近代、現代と人類がリニアに進化して、現代人だけが豊かで健康的な生活を謳歌するようになったと思っていましたが、これはおそらく錯覚でしょう。ノルマンディー上陸作戦で初めて使われた抗生物質のおかげで乳幼児の死亡が減り寿命を押し上げたとされます。しかし一方で自己免疫疾患に苦しむ人を世界中で増やしたように、深刻な慢性疾患のいくつかは医原病であることが疑われます。紀元前400年頃の古代ギリシャの医学者ヒポクラテスは、医学を臨床と観察を重んじる経験科学へ発展させました。すべての病気は腸から始まると考え、ほとんどの食物は薬になり、一方でファスティングや散歩を勧め自然との不調和が疾病をもたらすと示しました。17世紀になり科学的な研究により物質と精神を分ける心身分離の思想が広がると医学利権は自然治癒力を否定し始めました。現代の科学技術が解き明かす人体のメカニズムは紀元前の洞察を後講釈で証明したに過ぎません。皮肉なことに紀元前の知識だけでわれわれは十分健康になれるのでしょう。