
久しぶりに西岳に登りました。しばらく山から遠のいていたので、病み上がりのように身体は重いのですが、歩き始めると自然の地形によって体がチューニングされていく感覚があります。登りの負荷は心肺機能を目覚めさせ、下りの脚運びは筋肉をスムーズに動かし始めます。一人の静かな山歩きが好きなのは、自分の身体と自然に意識を向けることができるからです。都会の日常生活は、匂いや音に対して注意を向ける機会が少なく、その感覚の退化は感性の豊かさを奪うと思います。昨今の熊騒動によって、野生動物の気配には敏感になります。熊がいないとされる八ヶ岳ですが、今シーズンに入って熊らしき動物を見かけました。遠くで笹が揺れる音さえ聞き逃さない集中力が、山歩きの時間を豊かにします。同時に山は都会のように安全ではなく、集中力を欠いた瞬間に手痛い目に合わせ、人間本来の感覚を取り戻す場所に思えます。