有難くかつ不可解


病院が嫌いで何年も医者にかかっていませんが、例外は定期的なクリーニングで訪れる近所の歯科です。先生の腕は悪くないと思うのですが、なぜかいつも空いていて、すぐに診てもらえることは大きなメリットです。さらに歯科医に多いクロスセルによる押し売りをしないことも気に入っているところです。しかし、ここに行く最大のモチベーションは、建物が35歳の坂茂の出世作という点です。細長い長方形の敷地を2等分し、南側半分を外部空間として、地盤の関係からRC造ながら床を木造とすることで軽量化します。執着とも言える正方形・グリッドによる空間分割は、建築に合理性を求める自分好みです。全面ガラスによる開放的な室内のプライバシーを守りながら、風や木漏れ日を通すアイビー・スクリーンが設けられ、森のなかのような居心地です。外国からも見学者が訪れるこの名建築に、人が来ないことは有難くかつ不可解です。

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