
プルジャの登山隊の遭難を聞いたとき、真っ先に思い出したのは4月に行ったエベレストベースキャンプで聞いた雪崩の音です。実際の雪崩は映像でしか見たことがありませんが、氷点下十数度の暗闇のテントの中で、姿の見えない巨大な雪の塊が山を崩れ落ちて行ったであろう不気味な轟音は、古来より人々が感じてきた自然への畏怖を初めて経験する機会でした。それは8,000m峰を見たときの感動とも、カトマンズの喧騒における異文化体験という旅の記憶とも異なるものです。自然を見たのではなく、自然の力を知った瞬間でした。圧倒的に巨大な自然は、小さな人間の営みなど意にも介さず、自然のリズムを繰り返します。今回の雪崩事故と音の記憶が結びつき、意味を持ち始めたのだと感じます。雪崩は、人間の力ではどうすることもできない現象であり、自然は、人間にとって本質的に畏怖すべき対象だという感覚が今も身体に残ります。