押し車を回すモルモット


われわれを幸せにするものは本来とてもシンプルだと思います。長野県に来て、朝夕にラブラドールと鳥の鳴き声の響く森を散歩すると煩悩が薄れ始め、ゆっくりと深呼吸をしたくなります。2017年に発表された環境心理学の研究でも、自然の中で過ごすと時間がゆっくり流れることが報告されます。そんなときに思い出すのはメキシコの漁師とハーバードMBAの寓話です。この寓話には複数のバージョンがありますが、休暇中のMBAが昼寝をしている漁師にIPOして大儲けする方法を教えます。漁師がその後どうなるかと尋ねるとMBAは「そうしたら故郷に帰りのんびり昼寝をしながら海を眺められる」と言います。漁師は「でもそれは、今まさに私がしていることだ」というオチです。今も昔も人はお金を稼ぐ方法を考えますが、その一方で失うものには注意を払いません。人生の本質とは、押し車を回すモルモットと変わらない気がします。

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